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某ラッコの話

いきなり何を言い出すんだと思うかもしれないけど「ぼのぼの」について語ろうと思う。
理由は特にないけど、強いて言うなら36巻を買ったからってことにしておく。

まず、「ぼのぼの」って何?って人は一通りぐぐるなりアニメ見るなり
コミックス全巻そろえるなりしてからこの記事を読んでいただきたい。

しかしソレもかわいそうな話であるのでここは自称「ぼのぼのマスター」通称「ぼのマス」
かもねさんが丁寧に説明してやろうと思う。

ぼのぼのとは1986年から現在に至るまでの、
実に20年近く月刊まんがクラブ(現在)で連載されている「ぼのぼの」というラッコが主人公の漫画である。
一度、アニメ化されたこともあり、一般的にはそっちのほうが広く知られているかもしれない。
細かく説明すると恐らくこのブログの限界容量を軽く超える勢いで説明しかねないので、
あとは各自でwikiなり公式サイトの「ぼのネット」を参照するなりしていただきたい。

さて、前述したとおり一般的な「ぼのぼの」のイメージは、やはりアニメの影響により
独特なユルい雰囲気のほのぼのギャグとして捉えられているというのが現状だと思う。
だが、「ぼのマス」の原作厨であるかもねさんからしてみれば、
それは大きく歪んだイメージであり、全くの別物とまでは言わないがもはや時代遅れの
捉え方であると断言する。

はっきり言って置こう。
君たち一般人の頭の中にあるぼのぼのは、ぼのぼの全盛期である「中期」であり、
一切の闇を抱えずに繰り返される、ただただ光り輝く綺麗な思い出としての「ぼのぼの」でしかないのだ。
断じてそれは「今」のぼのぼのでもなく、また「過去」のぼのぼのでもない。
ぼのぼのとは「現実」なのだ。そうなのである。

少し熱くなってしまったが、君たちにはこの現実を知ってもらいたいがために
ぼのマス自らが筆を取り、語りかけている事だけは覚えておいていただきたい。
しかしながら、ぼのぼのに対しての悟りを開いてしまった私の膨大な知識を
全て教え説くには少々時間がかかるだろう。
そこで今回は主人公とその周辺の人物の連載当初から現在に至るまでの推移に絞って解説をしていくことにする。

つまるところ、「ぼのぼの」、「シマリスくん」、「アライグマくん」の三名だ。
文中の初期、中期、後期は明確な境目はないがコミックスの巻数で表すならば
初期…1~8巻、中期…10~20巻、後期…21巻~最新巻とする。

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まず、主人公である「ぼのぼの」
アニメではおっとりしていて頭の回転が悪く、決して物事にたいして腹を立てない
物静かで心優しい人物として描かれている。

ぼのぼのはお父さんと海辺の岸壁に二人で住んでいる。
母親のことについては一度も触れられたことはない。

原作のぼのぼのは初期から中期にかけてはアニメほど喋る数が少なかった。
アニメよりもっと幼稚さが伺える遊びを好んだり、
食べ物が無くなると泣いて倒れてしまうなどかなり幼さが浮き出た印象だった。
ちなみに余談だが初期の1~3話程まではぼのぼのには「耳」があった。

中期にはアニメのぼのぼのに近い性格になっており小学校低学年程度の知能にはなっているようだ。
しかし相変わらず、自分の考えた怖い妄想(代表的なのは「しまっちゃうおじさん」)で泣き出したり、
自分の身に迫った危機に対して汗をかくだけだったりとまだまだ幼さが残る。
しかし、初期には「困る」「泣く」だけだった表情に「笑う」が追加された事で明るいイメージが浮き出てきた。
アニメでは変なキノコを食って「怒る」事もあったが原作にはそのような話も無く、
心のうちでは怒る事はあっても表情に出す事は無かった。

後期には非常に表情豊かになっており「怒る」という感情を不器用ながら表情に表す事も増えてきた。
アライグマ君のように「怒り」を表す慢符(コレ→(#`Д´))を出す事もある。
また、恐怖からの「泣く」ではなく悲哀からの「泣く」という感情も後期から見られる。
初期、中期にかけての妄想癖はまだあるものの、怖い妄想で泣いたりということは無くなった。
これに伴って彼の頭の中からは「しまっちゃうおじさん」という存在は完全に消えたようだ。
もっとも「しまっちゃうおじさん」自体は中期の前半から一回も登場していないのだが。

このようにぼのぼの一人を取ってみても、長い期間をかけて彼の「成長」が伺える内容となっている。
ぼのぼのの面白さはこういったリアリティにもあるのだ。
しかし、ぼのぼのは子どもだからこそ成長が垣間見れる存在であるが、
作中に登場する大人はどうだろうか。

ぼのぼののお父さんは、昔ぼのぼの達の住んでいる岸壁のそばにある島の近くで
ラッコたちの群れのリーダーをしていた事があるらしい。(シャチの長老の話)
しかし、ある時シャチの群れが島の近くに移住してきたこともあり群れは散り散りになっていった。
無頼となったぼのぼの父はフラフラとシャチの前に姿を現し、
食ってくれと言わんばかりに出てくるのでシャチも気味悪がるようになり、
いつしか「死神ラッコ」と呼ばれるようになった。

そんな中シャチの群れの中でとある無法者が後のぼのぼの父の友人となる
「スカー」という口元に傷のあるシャチの恋人を殺してしまう。
長老とスカーは無法者に挑むも長老は返り討ちになり、その時の傷が原因で「眠り病」を煩い、
スカーは全身を傷だらけにされ殺されかける。
その時、あの「死神ラッコ」が姿を現し闘いを挑み、
スカー曰く「死ぬつもりか倒すつもりか分からなかった」が無法者シャチの口に飛び込み
喉をふさいで倒してしまった。
以来、ぼのぼの父はシャチの長老とスカーに認められ、今でも付き合いがある。
息子のぼのぼのも父の変な泳ぎ方(死神ダンスと呼ばれている)を見よう見まねで
試してみたところ、シャチに食べられる寸前で相手が恐れをなして逃げたので、
未だにその伝説は受け継がれているのだろう。
シャチだけでなく海岸に咲く花を守ろうとしてヒグマの大将に決闘を挑んだり、
アライグマくんのお父さんに物怖じせずに対決(イボをぶつけ合うだけの遊びだが)をしかけたりと
非常に勇敢かつ無謀な人物である。

と、このように大人に関しては過去の話や裏事情なんかをピックアップする話が多い。
大人も大人で子どもには見えない場所で苦悩している世界なのである。


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そんな大人と子どもの事情を一番体言しているのがアライグマ親子

アライグマくんは父親と森の中にある木のうろで二人暮らしをしている。
母親はアニメにも登場したが流浪の人であり、世界中を旅して回っているようだ。
別に夫婦仲が悪いわけではなく、アライグマくんのお父さんもそれに関して咎めるようなことはしていない。
実は森で一番仲がいい親子なのではないだろうか。
アライグマくんは父親と仲が悪く見えるがアライグマくんは父親をカッコイイと言ったり、
密かに裏では尊敬する描写もあり、アライグマくんのお父さんは旅から帰ってきた息子を
大好きな食べ物で労おうとする場面もあったりと意外と上手くやっているようである。

アライグマくん自体は初期から中期にかけてはただのいじめっ子という設定が強く出ていたが、
後期には理不尽な怒り方をすることも少なくなった。
初期のアライグマくんのいじめ方は本当に非道なただボカスカ殴るだけのいじめ方であったが、
中期になると天高く蹴り飛ばすなどのギャグ的ないじめ方に変化していった。
アニメ版でもよくシマリスくんを蹴り飛ばしてシマリスくんが宙を舞う描写が多くあった。

ぼのぼの、シマリス、アライグマの3人組の中では一番年上のようなイメージがあるが、
アニメではしょっちゅうおねしょをしたり、原作では時にぼのぼの達より幼い遊びに
興じている場面もあることから大して年齢は変わらないと思われる。

誰かと行動する時は感情にまかせて動くことが多いが、独りになると思想にふけったり、
人生について語ったりと意外な一面を覗かせる事も多い。
特に「寂しさ」や「切なさ」に関して思うことが多々あるようで、その度に熱心に考え込むのだが
最終的にはどうでもよくなったり、うやむやにして終らせる事が殆どである為、
あまり深くは考えていないようだ。

29巻でアライグマくんは突然旅に出て次巻まで本当に帰ってこないエピソードがあった。
その時アライグマくんは旅の途中で「モンちゃん」と言うメスのアライグマと仲良くなり、
告白するシーンも書かれている。
また、旅の途中(といっても序盤であるが)に出会った「シシーくん」と言うイノシシの子と
恋について語り合ったり、それ以前にも「フェネギーくん」と恋の話をしたりと、
ぼのぼの、シマリスの両名よりはそういったことに関心があるようだ。
旅から帰ってきた直後のアライグマくんは目の瞳が若干大きく書かれており、
やたら清純な雰囲気を出していたがすぐにもとの大きさに戻り、いつもどおりの乱暴者に戻った。

全体を通してみてもアライグマくんは全期にかけてキャラが一番安定していると言える。


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そして、全期を通して七色の変貌を遂げてきたのがこの人、というかリス。
シマリスくんである。

初期のシマリスくんはただのいじめられっ子キャラとして「いぢめる?」以外は、
話しかけられなければ特に言葉を発する事も無いおとなしいキャラだった。
性別も明確には描かれていなかった為メスと勘違いしてもおかしくはない雰囲気であった。

だが、変貌を遂げたのは中期。
急にとあるときから自分の意見を口に出すようになり「冗談」を好んで言うようなキャラになった。
口調もオネエ言葉から語尾に「でぃす」をつける男らしい(?)口調になり、
時にはアライグマくんをもたじろかす程の説得力をも持つようになる。
しかし、相変わらず2人の姉と両親の前ではそうもいかず、
まだまだ本領発揮をできてない様子であった。

後期に突入すると、姉達や父親に対して反発する事も多くなり、
時には姉にケンカを売り両者ボコボコになるまで殴りあったりと過激さを増してくる。
また、親友のぼのぼのに対しても本気でケンカをしたり、曖昧な返事をされると
言及してきたりと段々性格がキツくなってきている。
逆に、落ち込む時はとことん落ち込むのでぼのぼの達を困らせる原因にもなっている。
故に今ではどの人物よりも表情豊かなキャラクターとして物語の中心人物になる事が多い。

そして、シマリスくんは設定自体が他の登場人物と一線を画している。
まずシマリスくんは3人組の中で唯一の独り暮らしである。
これはシマリスという動物の習性からなのかそれとも何かの意図があるのかは分からないが
大きな違いのひとつである。

そして、兄弟がいること。
姉が2人居る事はアニメ版でもよく登場していたので周知かと思うが、実は腹違いの兄もいる。
これについては後ほど説明するが、兄弟がいる主要な登場人物は今のところシマリスくんだけである。
この兄弟を巻き込んでの話がシマリスくんには多い。

さらにもう一つがシマリスくん一家だけが変化が著しい事。
シマリスという動物が他に比べて短命な事もあるのかもしれないが、
連載とともに時間の経過による変化が非常に激しい。

ショー姉ちゃんは友人関係がガラの悪いヤクザがらみの人物が多くなり、
よく失踪して両親を悩ませるようになってきている。

ダイ姉ちゃんは「ヒッポさん」と言うリスと結婚し、家庭内暴力や家族に無頓着な旦那に困りながらも
「マホモ」という子どもを授かるまでに至った。つまりマホモはシマリスの甥である。
シマリスくんもこの一家についてはあまりよくは思っていない様子であった。

シマリスくんの両親は巻が進むにつれ母親が衰弱し、ついに最新刊では両親とも自力では
外に出れないほどに弱ってしまっている。
両親の事は半ば姉二人から押し付けられる形になってしまっているため、
シマリスくんは一時期鬱状態になってしまっていたが、父親から「なおしてくれなくてもいいんだよ」という
一言をもらい「少し楽になった」とぼのぼのに話している。

前述もしたが、これらはシマリスという動物が他の動物と比べ短命な事を良く表している描写である。
シマリスくんだけ他の二人と過ごしている時間の流れが違うのだろう。

シマリスくんの兄についてだが、シマリスくんのお父さんは今のお母さんと結婚する前にも結婚しており、
原因はわからないが離婚して完全に縁を切ってしまっている。
お兄さんが居る事が発覚したのは中期の後半になってからであり、それまで秘密にしていたとの事。
たまたま遊びに来たお兄さんであったが、特に過去の事に触れることも無く、
「許して忘れる」という信条を皆に教え説いて父の事も「許して忘れた」と最後に言っている。





いかがであっただろうか。
ただの動物達のギャグマンガと思っていた
自分がいかに愚かであったかが理解できただろうか。

皆心に闇を抱えながらも必死でそれを笑顔や無表情で取り繕いながら生きている動物達の物語。
人間と同じ苦しみを持ちながらそれを伝える言葉が見つからない不器用な生き物のお話。
それが「ぼのぼの」なのである。

コミックス全巻買わない子はしまっちゃおうね。

by kamone555 | 2012-10-03 16:08 | 日常